屋外広告士試験の問題C(設計・施工)の中から「鉄骨・ボルト・溶接」に関する情報をまとめました。
実際の屋外広告士試験から過去に出題された問題を元に作成した練習問題もありますので、屋外広告士試験に臨む方は、ぜひご活用ください。
1、屋外広告士とは?
屋外広告士とは、屋外広告物(いわゆる看板)の製作と施工に関する技術・専門知識を有することを証明する公的資格です。
町を歩いていると必ず目にする看板の数々もさまざまな法的規制や設計基準などが設けられており、看板を設置するためには専門の知識と技能が必要なのですが、屋外広告士は試験によってその知識と技能を裏付ける資格です。
そのため看板施工を取り扱う企業ではこの資格者を優遇する企業も多くあります。
2、屋外広告士はどうやって資格取得できるの?
屋外広告士の資格を取得するためには、毎年10月に開催される試験に合格する必要があります。
屋外広告士の受験資格
屋外広告士試験を実施しているのは一般社団法人・日本屋外広告業団体連合会という社団法人で、こちらのサイトによると以下のように記載があります。
一般社団法人 日本屋外広告業団体連合会 ウェブサイトより
- 受験年の10月1日現在で、屋外広告業等に従事した満18歳以上の実務経験が、3年以上ある者。(受験できる最低年齢は21歳となります。)
- 実務経験は施工等に従事した経験を指し、屋外広告工事とは、広告板、広告塔、ネオンサイン、ディスプレイ等、屋外広告物の製作・設置を行う工事をいいます。
要は受験年の10月1日までに
- 満21歳以上
- 実務経験3年以上(施工等に従事した経験)
このふたつを満たせば受検資格があるということです。
屋外広告士の試験内容
屋外広告士の試験では、学課試験(3科目)と実技試験1科目(設計orデザインから選択)からそれぞれ満点の60%以上を獲得する必要があります。
学課試験はA、B、Cの3科目合計で60%(全50問中30問以上)なので、得意科目に特化して勉強してもよいのですが、各科目の最低基準点(40%以上)が設けられており、これをクリアする必要があります。
たとえば学科試験Aで15問正解、学科試験Bで20問正解とそれぞれ満点をとれていても、学科試験Cで5問以下しか正解できなかった場合は学課最低基準点未達のために合格になりません。
実技試験は、設計(構造図面を作成)またはデザイン(色鉛筆などでデザイン画を描く)のいずれかを選択できます。
実技試験の採点は事務局の方が行っていて明確な基準は公表されていませんが、設計は強度等の必要要件を満たしているか採点され、デザインは出題意図に沿ったデザインが出来ているかを採点されているようです。
時間 | 出題数 | 合格基準 | 最低基準 | |
学課試験A(関係法規) | 60分 | 15問 | 3科目合計60%以上 | 正解6問以上 |
学科試験B(広告デザイン) | 80分 | 20問 | 3科目合計60%以上 | 正解8問以上 |
学科試験C(設計・施工) | 60分 | 15問 | 3科目合計60%以上 | 正解6問以上 |
実技試験(デザインまたは設計から選択) | 120分 | 1問 | 100点満点中60点以上 | – |
3、先に”2級建築施工管理技士”を取得するのもオススメ
資格のダブルホルダーで可能性がさらに広がる
屋外広告士は看板業界で有用な資格ではありますが、より幅広い業種へのステップアップを考えている方には建築施工管理技士の資格取得もおすすめです。
施工管理技士とは建設業において特定業種の技術を認定した国家資格で、土木、建築、管工事、造園、電気工事、電気通信設備工事、建設機械施工など7種、それぞれ1級と2級に区分されています。
この中でも特に狙い目は建築施工管理技士です。屋外広告士を目指す看板屋さんにとっても関係の深い分野だからです。
建築施工管理技士と屋外広告士のダブルホルダーは看板業界の中ではかなり有用です。
もちろん施工管理技士資格を持つことにより、さらに幅広い業界への転職などの可能性も拡がります。
建築施工管理技士の資格を先にとったほうがいい理由
もしもこの資格ダブルホルダーを狙う場合、建築施工管理技士の資格を先に取得しておくほうが屋外広告士試験でも有利になることをご存知でしょうか?
実は、1級・2級建築施工管理技士、または1級・2級土木施工管理技士をすでに取得している場合、屋外広告士試験の学科試験C(設計・施工)が免除になるのです。
屋外広告士試験4科目のうち1科目が免除されれば負担がかなり軽減され、屋外広告士試験の合格の確率は上がるでしょう。
施工管理技士のほうが実務経験年数などがより多く求められるのですが、どのみち建築施工管理技士と屋外広告士の両方の資格をとるつもりであれば、順番として施工管理技士を先に取る方が効率的だと言えます。
建築施工管理技士でも、2級であれば決して手の届かない難易度ではなく、完全独学で取得する人もたくさんいます。
また、より早い時期に資格を取得したいなら、株式会社ディーラーニング「独学サポート」などの通信教材を利用してより確実に合格を目指すことも、早期のキャリアアップへの方法のひとつでしょう。
4、鉄骨・ボルト・溶接の出題はどのくらい重要?
屋外広告士試験において、鉄骨・ボルト・溶接に関する問題はほぼ必ず複数問は出題されています。
屋外広告士のみならず、建築施工管理技士や建築士の試験にも出題の多い、いわば建築の基礎知識になるため、しっかりとした知識を身に着けておきたいものです。
5、練習問題
屋外広告士・学科試験Cにおいて、令和元年以降の過去問より特に出題される傾向の高い正誤問題をピックアップしました。
実際の屋外広告士試験ではほとんどが四者択一問題ですが、どの設問も出題文章の正誤を問う内容になっているため、個別で正誤が判断できるように勉強しておきましょう。
以下の例題を○×で答えてください。
それぞれ「答えと解説・用語」ボタンを押すと、正解と解説が出てきます。
【問1】スカラップとは溶接部の交差点で起こる溶接欠陥を避けるため、プレートを扇状に切り欠いた部分のことである。
○正しい
【問2】ビードとは、数珠玉のことで、溶接表面にできるウロコ状の凹凸ののことである。
○正しい
【問3】オーバーラップとは、余計な重なりという意味で、溶接肉の盛りすぎた状態を指す。
○正しい
【問4】ブローホールとは、溶接の際に何らかの原因で溶滴やスラグが飛散することである。
×誤り
ブローホールとは固まった溶材1の中にできた気泡のことである。
【問5】トルシア形高力ボルトの締付けは、高力ボルトに異常があるか確認したうえで頭部側に座金を一枚敷き、ナットを回転させて行う。
×誤り:座金はナット側に一枚敷く。ボルト頭部側は敷かない。
- トルシア型高力ボルト:高力六角ボルトとは違いボルトの頭が丸く、ボルト軸の先端にピンテールがついたもの。所定のトルクがかかるとピンテールが切れる仕組みになっている。ピンテールが切れることをトルク達成とすればよいため施工上の管理が容易というメリットがある。
【問6】普通ボルトは、振動、衝撃、または繰り返し応力を受ける接合部に使用してはならない。
○正しい
【問7】建設時の仮ボルトは本締めに用いる高力ボルトを使用してはならない。
○正しい
【問8】普通ボルトを使用する場合は、戻止めを設けなければならない。
○正しい
《参考》普通ボルトの戻止め措置として、建築基準法では以下が規定されている。
- ・ボルトをコンクリートで埋め込むこと
- ・ボルトに使用するナットの部分を溶接すること
- ・ボルトにナットを二重に使用すること
- ・上記と同等以上の効力を有する戻り止めをすること(スプリングワッシャーなど)
【問9】高力ボルト用の孔あけ加工は、せん断孔あけとする。
×誤り:高力ボルト用の孔あけ加工は、ドリル孔あけとする。
【問10】鋼材をせん断切断する場合の鋼材の板厚は13㎜以下とする。
○正しい
【問11】工場製作の各工程において使用する鋼製巻尺は、工場製作用基準鋼製巻尺と照合し、その誤差を確認する。
○正しい
【問12】鉄骨構造では、加工や小さな組立てまで工場で製作できるので、現場施工が簡略化できる。
○正しい
【問13】溶接部は、接合部が簡潔になり、鉄骨結合部の剛性が高まるという構造上の大きな利点がある反面、溶接工事の良否が溶接作業を行う人の技量で左右される欠点がある。
○正しい
【問14】隅肉溶接の有効長さは、すみ肉のサイズの10倍以上、かつ30mm以上とする。
×誤り:隅肉溶接の有効長さは、すみ肉のサイズの10倍以上、かつ40mm以上とする。
- 隅肉溶接:JIS-Z-3001-1(2018)で示されている溶接の種類の1つで、「重ね継手」、「T継手」、「角継手」などの2つの面を溶接する場合において、開先(かいさき)を設けずに3角形状の断面を持つ溶接。
【問15】すみ肉溶接の有効のど厚は、通常すみ肉サイズに0.9を乗じたものとする。
×誤り:通常すみ肉サイズに0.7を乗じたものとする。
- 有効のど厚:溶接の厚みをのど厚といい、そのうち応力が伝わる厚みを有効のど厚という。隅肉溶接では隅肉サイズを底辺とする二等辺三角形の垂線の長さが有効のどとなる。完全溶込み溶接の場合、薄い方の板厚が有効のど厚となる。
【問16】設計図に示す溶接長さは、有効長さにすみ肉サイズの2倍を加えたものであり、その長さを確保するように施工する。
○正しい
【問17】高力ボルトの締付け作業の順序は、ボルト群ごとに継ぎ手の板端部より中央部に向かって締付けなければならない。
×誤り:高力ボルトの締付け作業の順序は、ボルト群ごとに継ぎ手の中央部より板端部に向かって締付けなければならない。
【問18】高力ボルトの挿入から本締めまでの作業は、原則として同日中に完了させなければならない。
○正しい:JASS6に「ボルト挿入から本締めまでの作業は、同日中に完了させることを原則とする。」とされている。
【問19】高力ボルトの摩擦接合部の摩擦面には、さび止め塗装してはならない。
○正しい:塗装をするとトルク係数が変わるのため不可。
【問20】普通ボルトの孔径は、ボルトのねじの呼び径に0.5mm以下の値を加えたものとしなければならない。
○正しい
【問21】溶融亜鉛めっき高力ボルトは、通常の高力ボルトの種類1種(F8T)に溶融亜鉛めっきを施したものである。
○正しい
【問22】高力ボルトと普通ボルトを併用する場合は、各々の耐力を累加できる。
×誤り:高力ボルトと普通ボルトを併用する場合、剛性が高い高力ボルトに全応力を負担させることとし、耐力の累加はしてはならない。
【問23】高力ボルトの締付けは、高力ボルトに異常がないことを確認したうえで、ボルト頭下およびナット下に座金を一枚ずつ敷き、ナットを回転させて行う。
○正しい
【問24】鉄骨製作用鋼製巻尺は、あらかじめ工事現場用基準鋼製巻尺と照合してその寸法誤差が工事に支障ないことを確認した。
○正しい
《参考》工場製作用基準鋼製巻尺と工事現場用巻尺のテープ合わせは張力5kgfとする。
【問25】床書きの原寸作業は、工作図を作成することにより省略した。
○正しい:床書き原寸は、工作図をもってその一部または全部を省略できる。
【問26】高力ボルト用の孔あけ加工を、接合面をブラスト処理した後にドリル孔あけにて行った。
×誤り:ブラスト処理を行う前に孔あけしなければならない。
【問27】溶接作業は、作業架台を利用して部材の位置を確保し、できるだけ下向きの姿勢で行った。
○正しい
【問28】鉄骨錆止め塗装において、塗装場所の気温が5℃以下または相対湿度が85%以上の時は作業を中止する。
○正しい
【問29】鉄骨錆止め塗装前の素地調整を行った鉄面は、活性となり錆びやすいため、直ちに塗装を行う。
○正しい
【問30】炎天下で鋼材表面温度が40℃の状態で鉄骨錆止め塗装を行うと、塗膜に泡を生ずる恐れがあるため塗装作業を中止しなければならない。
×誤り:塗装作業中止の必要があるのは、鋼材温度が50℃以上となった場合である。
【問31】コンクリートに埋め込まれる鉄部は塗装してはならない。
○正しい:塗装をするとコンクリートと鉄との密着性が減衰するため塗装しない。
【問32】同じ断面積をもつ鋼材を用いる場合、角形鋼管や円形鋼管よりも、H型鋼のほうがねじりモーメントに対して大きな耐力がある。
×誤り:H型鋼は溝形鋼(チャンネル材)や等辺山形鋼(Lアングル)と同様にねじりモーメントに対しては耐力が小さい。
【問33】トラス部材の接合部は、存在応力を十分伝え、かつ、部材の許容応力の1/2以下の耐力であってゃならない。
○正しい
【問34】鉄骨工事において施工者は、設計図書に基づいて設計仕様を正しく織り込んだ工作図を鉄骨製作業者に作成させ、施工性や構造細部の納まりを確認したのち、安全性を確保する上では設計の際に十分余裕を持たせることが重要である。
○正しい
【問35】屋外広告物を施工する際、JISの信頼性に基づいた品質内容の素材を基本にしているが、市場に出回っている鋼材の中には再生品や粗悪品が混ざっている場合があり、品質の保証が十分でない場合があるため、安全性を確保する上では設計の際に十分余裕を持たせることが重要である。
○正しい
【問36】異種鋼材を溶接する場合、接合される母材の許容応力度のうち、大きい方の値をとる。
×誤り:異種鋼材を溶接する場合、接合される母材の許容応力度のうち、小さい方の値をとる。
- 許容応力度:構造物において分布された部材にかかる応力(抵抗する力)に対し、部材が耐えうる限界値として定められたもの。
【問37】隅肉溶接の溶接長さは、有効長さに隅肉サイズの1.5倍を加えたものとする。
×誤り:隅肉溶接の溶接長さは、有効長さに隅肉サイズの2倍を加えたものとする。
【問38】雨天または特に湿度の高い場合は、屋内屋外に関わらず水分が母材の表面および裏面付近に残っていないことを確かめてから溶接を行う。
○正しい
【問39】鉄骨製作業者は、溶接工作全般について計画・管理・技術指導を行う専任の溶接技術者をおかなければならない。
○正しい
【問40】普通ボルトおよび高力ボルト孔の中心間の距離は、公称軸径の2.5倍以上とする。
○正しい
【問41】軸方向力を伝える接合部においては、軸方向力を受ける材の重心軸と、材の接合に用いる高力ボルト群の重心軸とはなるべく一致させるよう設計し、一致しない場合は偏芯による影響を考慮する。
○正しい
【問42】高力ボルトの摩擦接合部の摩擦面は、十分なさび止め塗装をしなければならない。
×誤り:高力ボルト摩擦接合部の摩擦面は塗装をするとトルク係数が変わるのため塗装してはならない。
【問43】許容応力は、高力ボルトの場合は軸断面について算定するが、普通ボルトの場合はねじ部有効断面について算定しなければならない。
○正しい
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